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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年06月07日


今日の朝も美穂は、俺のベッドで眠っていた。
夜仕事を終え、食事を済ませてから俺の病室に来てくれている。
美穂には、迷惑かけたなとつくづく思う。


今日も手を繋いでトイレに行く。
美穂は、ぎゅっと俺の手を握る。


「逃げないから、そんなに力を入れなくていいぞ」

「飛び降りない?」

「飛び降りないって……」

「それでも、離さない」


見ている人は、俺たちを見てクスクスと笑う。
美穂は、俺に体を密着させて歩く。
美穂の歩くペースに合わせて歩く。
そうしないと美穂が転んでしまうかもしれないから……


「歩くの遅いね」


美穂が照れながら笑った。


「美穂に合わせて歩いているから……」

「そっか……」


なんかこういうのも良いな。
俺は、少し遠回りして病室に向かうことにした。


すると病院の待合室。
泣いている女の人が、目に入った。

こういう時は、気づかないふりして歩く。
それが、美穂のスタイル。
だけど、今日の美穂は違った。


「どうしたんですか?」


美穂は、その女の人に話しかけた。


「なんでもないです。
 ありがとうございます」

「聞きますよ?」


美穂は、真剣なまなざしで言葉を続けた。


「いいんです。
 初めての人に話す様なことではありません。
 ほっといて下さい」


美穂は、一瞬泣きそうな顔をした。
そして、俺の手をぎゅっと握りしめ。
足を進めた。


病室に入ると俺は、再びベッドに潜った。
美穂も一緒にベッドに横になる。


向かい合わせで眠るのは、なんか照れくさい。
俺は、美穂に背中を向けた。

すると美穂のすすり泣く声が聞こえた。

俺は、再び体を回転させ美穂の方を見た。


「美穂?」


美穂は泣いていた。
ただ、ずっと泣いていた。
俺は何も出来ないままただ呆然とするしか出来なかった。


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