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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年06月29日


朝起きて、ポケモンを少しやり歩いてみようと思い病院の庭を散歩する。
1人で病室にいるのは暇だ。
美穂は、仕事。
歩ちゃんたちは院内学級。
それは、寂しいのだ。

なので、天気もいいことだし散歩に出ようと思ったのだ。

すると昨日のおじさんが数人の看護師さんと、たこ焼きパーティーの後片付けをしていた。


「あ、手伝いましょうか?」

「あ、君は、昨日の……」

「今日もたこ焼きパーティーだったんですか?」

「そうだよ」

「たこ焼き美味かったです」

「そう言ってもらえるとこちらとしても嬉しいよ」


おじさんがニッコリと笑う。


「一緒に居た子は、彼女かい?」

「いえ……」

「そっか……
 あの子は、君の事を大事に思っているよ。
 大事にしてあげなさいね」

「はい……
 あ、俺、斎藤 一って言います」

「俺の名前は、山本 昭三(やまもと しょうぞう)だよ。
 大腸がんで入院している」

「俺は、脳腫瘍です」

「そっか……」

「はい……」


テンションが、2人で下がってしまった。



「若いのに大変だね」

「そうですね……
 でも、何とかなってます」


俺は、少し笑って見せた。


「俺ももっと気楽に考えなきゃな……」

「山本さんは、どうしてたこ焼きパーティーを開いているのですか?」

「簡単に言うと子供たちの笑顔が見たいからかな……」

「そうですか……」

「斎藤君は、どうして脳腫瘍がわかったんだい?」


「俺は……
 俺は、自殺したんです」

「え?」


山本さんは、目を丸くさせて驚いた。
俺も自分でも驚いている。
こんなあっさり言ってしまえるとは、思わなかった。


「んで、病院に運ばれて気が付いたら病院の個室。
 俺が意識が無いうちに精密検査をやったら脳腫瘍とわかったらしいです」

「そうなのか……
 申し訳ない、辛い話だったね。
 聞いても良いかい?」

「何をです?」

「自殺の理由さ……」

「わかりません。
 ただ、生きることに疲れたんです」

「そっか……」

「まぁ、自分で死ななくても病気で死ねるんですけどね」

「そっか……」


山本さんは、怒る事も無く叱る事も無く哀れにも思う事も無く、ニッコリと微笑んだ。


「生きていればいい事あるさ」

「俺もそう願います」


俺も、そう言って笑った。

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