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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月23日


金曜日。
雨……。

今日、愛ちゃんのお葬式が行われた。
左目には隼人君とお揃いの眼帯が、つけられていた。


隼人君は、何も語らない。
元太君や瓜君が、話しかけても何も答えない。
桃ちゃんは、泣いている。


「なんだか、辛いね……」


美穂が、そう言う。


「そうだね……」

「淋しいね……」

「うん」


美穂も、あまり話さない。
愛ちゃんも小さいころから病院に居たため、病院以外での友達は、いなかったらしい。
ご両親は、愛ちゃんが赤ちゃんのころ、愛ちゃんを清輔さんに預けてどこかに行ったらしい。
その後の行方は、わかっていない。
今日の葬儀にも顔さえ出していない。


きっと愛ちゃんが亡くなったことさえ知らないのだろう。
きっと愛ちゃんが病気であったことさえも知らないのだろう。


そう考えると少しやるせない。


泣かない隼人君と泣き虫だった愛ちゃん。

2人の関係は、どんなものだったのか……
それは、わからない。


隼人君のこともまだほとんど知らない。
ただ愛ちゃんと隼人君の共通点は、両親がいないこと。

隼人君の場合は、無理心中して隼人君だけ生き残ったらしい。
それは、ずっと前に千春ちゃんから聞いたことがある。

きっと似た者同士の2人は、惹かれあうものがあったのだろう。
愛ちゃんを乗せた霊柩車が、火葬場へと向かった。
いつも思う。
いつも切なく思う。


霊柩車が、発射するときのクラクションの音が……。
愛ちゃんが、元気な時に使っていたお茶碗を割る瞬間。


俺の心の中に雨が降る。


泣きたくなるほど窮屈になる。


生きるとは何か?
死ぬとは何か?

俺の心に何を訴えたいのか?
俺には、それはわからない。

でも、この病院に来て思う。
自ら死ぬということは、亡くなった人に対しての冒涜なのかも知れない……


だけど、俺は改めて思う。
生きるって難しい。
だから、人は死にたくなる。

でも、死んだ先にあるものは何か?

それは、悲しみと生きている間に何かできなかったのかと言う罪悪感のみ……
俺は、まだ少し生きるけど。
愛ちゃん、見守っていてね。


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