SSブログ

まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月29日


曇り。
俺は、もうひとつケリをつけなければならないことがある。


千春ちゃんが、俺の血圧を測りに来る。
点滴など、最近はしていない。


「ねぇ、千春ちゃん」

「何かな?」

「俺、明日退院する」

「へ?」

「もう、自殺しようとなんか思わないからさ……
 だから、退院する。
 俺が入院しているのって脳腫瘍なんかじゃないんでしょ?
 自殺の再発防止のために入院しているんでしょ?」

「それは、私に言われても……」


千春ちゃんが、戸惑っていると銘先生がやってくる。


「退院したあとは、どうする気なの?」

「たこ焼き屋でもはじめようかな……と思っているんだ」

「たこ焼き?」

「山本さんに教えてもらった技術を活かしてなら、出来そうな気がする」

「そう……」

「うん。
 あと美穂のことも知ってる。
 もうこの世にはいないんでしょ?」

「え?」


千春ちゃんと銘先生が目を丸くさせる。

やっぱ姉妹だ。
驚く顔がそっくりだ。


「あの子の名前は、たぶんだけどわかった気がする」

「そう……」

「だから、俺は、あの子一緒ならやっていけそうな気がするんだ」

「わかった。
 退院手続きの方は、私が上の人に話してみる」

「ありがとう」

「でも、これだけは約束して……
 もう2度と自殺なんてしないで。
 貴方は、もうわかっているはず。
 命の大事さと儚さ……
 そして、もっと生きたい命があったと言うことを……」

「うん。
 わかっているよ。
 だから俺は生きるんだ。
 山本さん、萌ちゃん、充君に歩ちゃん、愛ちゃんの分まで生きる」

「約束だからね!」

「うん」


俺は、ニッコリと笑う。
俺は、生きるんだ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。