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ピノの旅(小説) [ピノの旅]

2013年03月22日


城に連れていかれた俺は、取調室に乱暴に入れられた。
城に取調室があるなんて、びっくりだ。


「さて、亜金君と言ったね。
 君にお願いしたいことがあるんだ」


兵士長が、そう言って椅子に座ると俺も強制的に向かいの席に座らされる。

兵士長のほかに、兵士が3人。
俺の体を押さえている。


「名前も知らない人のお願いなんて聞きたくないね」

「それは、失礼……
 俺の名前は、西郷。
 単刀直入に言おう。
 君にあの実験体の譲渡及び製造方法を教えてほしい」

「ピノは渡さないよ」

「そうか……
 残念だ。
 君の体に直接聞こう」


兵士の一人が、俺の指に手を添える。
そして……


バキっと部屋中に音が広まる。


西郷が、表情を変えず、そのまま倒れる。
女の子が、モップを持って必死の表情で俺の顔を見る。

俺は、この顔を知っている?
なんでだろう。
会ったことあったっけ?


女の子が、残りの兵士に向かいモップを向ける。


「氷の国継承者笹鈴が命じます。
 今すぐ、その男の子を放しなさい!」


女の子の目は必死だった。
兵士たちは、戸惑いながら俺から離れた。


「亜金ちゃ。
 久しぶりだね、もう会えないかと思ってた」

「え?」


俺は、首を傾げた。


「あれ?覚えてない?
 昔、座来栖君と3人で遊んだことあるよね?」


座来栖……
確かにその名前は知っている。
たまに女の子と一緒に夢に出てくる男の子の名前だ。
ってことは、もしかして……


「俺が、この町に来た時に一緒に遊んだ女の子?」

「そう!
 あれから顔を出さないから、何年振りだろうね……」

「12年ぶりかな……」

「もう、そんなになるのかぁー」

「うん」

「さ!お母様に気づかれる前に逃げよう!」


笹鈴さんは、そう言って走った。
俺も走る。

思いっきり走って笹鈴さんは、館まで案内してくれた。


「もう、ここまでくれば大丈夫ね。
 亜金ちゃ、絶対に捕まらないでね……
 お母様は、欲しいものは、全て手に入れないと気が済まないタイプだから……」

「あ、うん」

「じゃ、私戻るね!」


笹鈴さんは、そう言って城の方に向かって走った。
あ、「ありがとう」って、言うのを忘れてたや……

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