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ピノの旅(小説) [ピノの旅]

――3月23日


雨がポツリとポツリと降る。
兵士たちが館の周りを囲っている。


昨日、逃げたのが不味かったらしい。
清空さんと白銀さんが、冷たい目で兵士たちを睨んでいる。
シエラ姉さんは、ピノを抱きしめ不安そうに俺の方を見ている。


「予想通りだな」


清空さんが、ため息をつく。


「とりあえず館に結界を貼ったよ。
 これで、兵士たちは入れないだろう……」


白銀さんが、そう言ってニッコリと笑うと俺の頭を撫でて言葉を続ける。


「大丈夫。
 亜金とピノちゃんは、僕たちが全力で守るから……」

「うん」


俺は、頷いた。


「ここからは、長期戦だな」


清空さんが、再びため息をつく。


「うん??」


白銀さんが、首を傾げる。


「どうした?」


清空さんが、白銀さんに尋ねる。


「強い鼠が一匹入ってきたようだ……」

「ほう……
 そんな強い鼠がいるのか……
 なら、警戒しなくていけないな」


走る足音がだんだん近づいてくる。
俺は、プレゲトンを握り白銀さんと清空さんが、構える。


「亜金、震えているぞ」


プレゲトンが、俺に茶々を入れる。
でも、俺は、それに構う余裕がない。
剣を握るということは、人を斬るということだ。
俺は、その経験がない……

俺が、緊張している間にも足音が近づいてくる。


「2人だな……」


清空さんが、そう言って呪文の詠唱を始める。
そして、ドアが開く。

そして、現れたのは、笹鈴さんと男の子ひとりだった。
男の子はどこかで見たことがある。


「亜金か……?
 久しぶりだな。
 わかるか?俺、座来栖だ」


座来栖君?


「今、この状況で言うのもなんだけど……」


笹鈴さんが、涙目で俺たちに訴える。


「なんだ?」


清空さんが、呪文の詠唱を止める。
そして、笹鈴さんは、大きな声で、俺たちに訴える。


「私の母を……
 水を殺してください!」
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