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ピノの旅(小説) [ピノの旅]

――4月1日


氷の女王が、いなくなり。
雪の町と言われていた町は、本来の名前である桜の見える丘の町と呼ばれるようになり町人の皆は、久しぶりの花見を楽しんだ。
だけど、俺の頭の中には、それ以上に気になることがあった。

中川圭。

勇者がどうしてこの町に?

俺の謎は深まるばかりだ……


「さて、亜金。
 お前は、どうするのだ?」


清空さんが、そう言って俺の目を見る。


「どうするって?」

「ピノの存在が、外の世界にもばれた以上、この館にはずっとは、入れないぞ?
 下手をすれば、戦争になる」

「そうだね……
 笹鈴さんや座来栖君は、どうするの?」


俺は、話を笹鈴さんと座来栖君に尋ねた。


「私は、お母様を探す旅に出るわ。
 この国には、私の居場所なんてないしね」


笹鈴さんが、そう答えると座来栖君は頷く。


「俺は、笹鈴の護衛をする」

「そっか……
 じゃ、俺もそれに同行を……」


俺が、そこまで言いかけた時、白銀さんが大きな声を出す。


「ダメだ!
 今の君では、座来栖君たちの足手まといになるだろう……
 それに笹鈴さんたちの邪魔になるのは目に見えている」


白銀さんの目が、少し冷たい。


「それに、旅には目的があった方が楽しいぞ?」

「目的って言ってもな……」


俺が、そんなことを言っているとピノが、俺のそばに近づいてくる。


「あきーん。
 これ、雪ー?」


ピノが、持っていたのは桜だった。


「違うよ、ピノ。
 これは、桜って言うんだ」

「ピノ、雪が見たい……」

「えー。
 さっきまで見てたじゃないか……」


俺が、そう言うと笹鈴さんが口を開く。


「あれは、魔力で作った人工雪だからね。
 本物はもっと綺麗なんだよ」


笹鈴は、そう言ってピノの頭を撫でる。
ピノの無邪気な笑顔が、心をチクチクと指す。
ピノは、あと生きれても半年……
俺は、決断の時を迫られていた。

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