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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年07月31日


昨日の夜。
萌ちゃんの通夜は行われ、今日はお葬式がしめやかに行われた。


瓜君も桃ちゃんも静かに涙をこぼした。

まだ、五歳と四歳。

お母さんに甘えたい盛りだと思う。

ぎゅっと太郎の手を握り締め。
じっと火葬場の煙を見ていた。


「お母さんが、天国に向かっているよ」


太郎が、そう言うと瓜君が、頷いた。


沢山の人が、泣いている。


萌ちゃんは、俺と違って昔から友達が多かった。

だから、沢山の人が葬儀に集まった。

喫茶店のお客さんも沢山来た。
地方から来てくれた友人もいた。

懐かしい顔ぶれ……


俺が、死んだらこんなに人が集まるのかな?


いや、集まらないだろう。

俺は、ゆっくりと空を見上げた。

ひこうき雲が静かに揺れる。

それが、どこか切なく。
どこか辛かった。

葬儀が終わり、俺は黒いスーツのまま病院の庭に座り込んでいた。

すると山本さんが、たこ焼きを持って来てくれた。


「大変だったね……」

「え?」

「萌さんのことだよ」


山本さんは、そう言ってたこ焼きを俺に渡してくれた。


「ありがとうございます。
 萌ちゃんと知り合いだったんですか?」

「萌さんは、病院に入院するおじさん達のアイドルだったからね」

「そうなのですか……?」

「ああ。
 可愛いし愛想いいし、喫茶店の料金も安いし……
 文句なんて一つもない」


山本さんは、そう言ってニッコリと笑う。


「ですね……
 俺も、あそこのコーヒー好きです」

「ああ。
 コーヒーも美味しかったな……
 寂しくはなるけど、太郎君が頑張ってくれてる。
 俺は、萌ちゃんが居なくなってもあそこに通い続けるぞ」

「俺もです」

「さ、たこ焼き、冷めないうちに食べてくれ」


山本さんが、そう言ってこの場を去った。


俺は、一個たこ焼きを頬張った。


熱かった。
それ以上に、美味しかった。

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