SSブログ

まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年08月21日


今日、子供たちと一緒にゆかりさんの部屋の前に立つ。
部屋には鍵が、かかっている。
なので、中には入れない。


「ゆかりさん。
 出てこようよ……」


歩ちゃんが、大きな声でそう言う。


「そうだよ!
 赤ちゃん見せてくれるって約束したじゃんか!」


元太君が、そう言う。

ゆかりさんは、何も答えない。


「赤ちゃん、きっと可愛いよ!
 赤ちゃん、きっと寂しいと思うよ!
 だから、お願い、私たちに姿を見せなくていいから赤ちゃんを抱いてあげて!」


愛ちゃんが、そう言うとゆかりさんの声が、響く。


「帰って!
 あの子は……あの子は、あの子は……!」


ゆかりさんは、そこまで言って言葉を止める。


「ゆかりさん、子供には罪はないよ?」


隼人君が、そう言うとゆかりさんが言葉を続ける。


「そう、あの子には罪はないの……
 悪いのは私……私が、悪いの!」

「ゆかりさんは、悪くないわ!
 悪いのはあの男よ!」


美穂が、そう言うとゆかりさんが小さな声で弱々しく言う。


「あの人と一緒になった私が、悪いの……
 あの子も産まれてこなければ、きっと苦しい思いをしなくて済んだ……」


俺は、ゆかりさんにどんな声をかけてあげればいいのかわからない。

だけど、何かを言わなくちゃ……


俺が、口を開けようとした時、千代田さんが俺たちに近づいてくる。


「貴方たち、何やってるの?」


千代田さんが、俺と美穂の方を睨む。


「ゆかりさんに早く元気になってもらいたいです……」


俺は、それしか言えなかった。


「今は、そっとしてあげて……」


千代田さんは、そう言うと歩ちゃんたちはしょんぼりした様子で、それぞれの部屋に戻った。

俺も美穂と共に部屋に戻った。

結局俺は、何も言えなかった。
情けないな……
ホント、情けない。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。