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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年08月22日


昨日の深夜。
俺は、自分の病室を出た。
そして、ゆかりさんの部屋の前に座る。


「ゆかりさん、起きてますか?」

「……亜金君?」

「そうです。
 亜金です」

「こんな時間にどうしたの?
 良い子は、寝る時間だぞ」

「俺は、悪い子なんです」

「そうだね。
 亜金君、悪い子だ」


ゆかりさんは、そう言って少しだけ笑った。
少し落ち着いたみたいだな……


俺は、小さく息を吸い込むとゆっくりと言葉を出した。


「少し、昔話をしましょうか?」

「昔話?
 むかーし、むかーし?」

「そうです。
 むかーし、むかーしの話です」

「わかった。
 亜金君のお話聞く」

「むかーし、むかーし、1人の男の子がいました。
 その子は、何処にでもいる普通の子。
 その男の子は両親の愛をいっぱい注がれ3歳まで育ちました。
 だけど、その男の子に変化が訪れました。
 その男の子は、悪い病気が発症したのです。
 体の至る所に痣のようなシミがでたのです」

「え??それって……」

「そのシミが出た途端、両親はその子供と距離を置くようになり……
 また、両親を含め、バケモノと避けるようになり他人からも距離を置かれるようになりました。
 やがて、子供に弟が産まれると両親の愛情は、弟に集中し……
 その子は、1人になりました。
 外でも1人、家でも1人。
 寂しくて寂しくて毎日泣いていました。
 その子は、欲しかったのです。
 両親の愛情が……
 その子は、抱きしめてほしかったのです。
 両親に……」

「亜金君……?」

「まぁ、何が言いたいかと言うと1人は、寂しいってことです。
 せっかく生まれて来たのに、1度もお母さんに抱きしめてもらえない。
 そう言う寂しさ、なんとなくわかるんだ」

「でも、あの子は……」

「限られた命だからこそ、限られた時間をお母さんと過ごしたい。
 そう思うのって贅沢なのかな?」


鍵の開く音が、廊下に響く。
そして、ゆかりさんの部屋の扉が開く。
ゆかりさんが、俺の方を見て言う。


「亜金君。
 私、赤ちゃんに会いたい……」

「うん」

「それで、抱きしめてあげたい」

「うん」

「亜金君……
 ありがとう」

「……うんん」

「はぁ、なんかお腹空いちゃった」

「じゃ、千代田さんに頼んで夜食を貰おう」

「うん!」


俺たちは、そのまま千代田さんの所に行って夜食を貰った。
ゆかりさんの姿を見て、千代田さんは、安心したような顔を見せた。
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