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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年09月28日


金曜日。


山本さんの具合は、よろしくない。
もう、自分で食事する事も出来ない。


一昨日までは、ある程度元気だった。


でも、今はもう……


そう言えば、大分前、余命ひと月って言われてたっけ。
命に対して考えさせられた……


俺は、何するもなく山本さんの病室に向かった。


「亜金君か……」


山本さんが弱々しく笑う。


「……はい」

「さっきね、村雨君も来てくれたんだよ」

「小太郎が?」

「ああ……
 仕事サボって来たから、喝を入れてあげたよ」

「そうですか……」


山本さんは、優しく笑う。


「あ、亜金さん、いらっしゃったんですね……」


恵子さんが、病室に入ってくる。


「あ、はい。
 お邪魔しています

「いつもありがとうね……」

「いえ……」

「私、飲み物買ってくるわね」


恵子さんは、そう言って病室を出た。


「亜金君。
 病気は、大丈夫なのかい?」

「はい……
 今のところ問題ないです」

「命は、大事にしなくちゃいけないよ」

「はい」

「私はね、生きたい。
 君も沢山辛い思いをしたんだろうけど……
 それでも、やっぱり生きたい命があるってことを知っていて欲しい。
 これから先、もっと辛いことが待ちうけているだろう。
 それでも、私は君には生きて欲しいと思う」

「生きていて良い事なんてあるのでしょうか?」

「亜金君、そうじゃないんだよ」

「え?」

「生きていて良い事があるんじゃない。
 生きている事が良いことなんだよ。
 萌ちゃんもそうだっただろう?
 あの子も、相当生きたかったと思う」


そう……
美香も生きたかったんだろうな……
俺は、あの手紙をまだ開けれずにいる。


「大丈夫。
 俺はもう自殺しませんから……」

「なら、よかった。
 早くにこっちに来たら怒るからね」


山本さんが笑う。
俺は、苦笑いを返す事しか出来なかった。

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