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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年10月01日


山本さんのお葬式が行われる。
俺は、恵子さんに了承を得て、山本さんに教えてもらったたこ焼きを作った。

普通、非常識だと思われる行為だと思う。

でも、非難の声を上げる人は、1人も居なかった。

みんな、喜んでくれた。


「山本さんのたこ焼きが受け継がれた」


そう言って涙を流す人も居た。
嬉しかった。
人に喜ばれる事が何よりも嬉しかった。


「亜金のたこ焼き大盛況だね」


美穂が、そう言って俺にコーラーの入ったペットボトルを渡してくれた。


「ありがとう」


俺は、蓋を開け、一口口に運んだ。


「この調子だと、お店開けるね」

「山本さんにも似たようなことを言われたよ」

「退院したら、お店開こう!
 絶対繁盛するよ」

「でも、屋台にしろ店にしろお金がかかるよ」

「そのことなのですが……」


恵子さんが、俺たちに話しかけて来た。


「恵子さん?」

「屋台は、主人が使っていたモノを使って頂けないでしょうか?」

「え?」

「生前主人に頼まれました。
 『屋台は亜金君に譲ってやって欲しい』と……」

「いいのですか?
 あの屋台は、山本さんにとって大切な……」

「どうせ、私達が持っていても仕方がないモノですから、是非もらって下さい」

「ありがとうございます」


俺は、深く恵子さんに頭を下げた。


「大切にしてくださいね」

「はい!」


恵子さんは、ニッコリと微笑むとその場を去った。


「これで、ますます死ねなくなったね」

「もう死のうなんて思わないよ」

「ホントに?」

「ああ……」

「ふーん」


美穂が、俺の体を後ろから抱きしめる。


「亜金、死なせないからね」


美穂が、そう言って耳元で笑う。
俺は、とりあえず頷いた。

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