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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年10月21日


晴れ、今日は朝の6時半に目を覚ます。
今日は、日曜日。
そして、美穂は俺の隣で眠っている。

暑かった人肌も、この季節になれば温かくなる。
心地いい。


この女の子が、誰なのかわからないのは、少し怖いモノもある。
でも、不思議と嫌じゃない。


たぶん、俺はこの女の子のことが好きなのかも知れない。

美穂に対しては、そんな気持ちにはなれなかった。
だけど、この美穂は、そうじゃない。
強くて泣かなくてヘビースモーカーだった美穂も好きだったけど……
弱虫で子供好きで優しくて暖かい、そんな今の美穂も好きだ。


俺は、美穂を起こさないようにベッドから降りる。
そして、待合室に向かう。


待合室に向かうと、今にも泣きそうな顔をしていた充君の姿が目に浮かんだ。


でも、そこに居たのは、充君じゃない歩ちゃんのお母さんだった。


俺は、軽く会釈した。


前に歩ちゃんが、危なかった時など何度かあったことがあった。
だけど、こうやって会うのは、初めてかもしれない。


「おはようございます」

「おはようございます」


挨拶を済ませたあと、暫くの沈黙が訪れる。


「貴方が、亜金さんですか?」

「あ、はい……」

「いつも娘が、お世話になっています……」


そう言って歩ちゃんのお母さんが頭を下げる。


「あ、いえ。
 むしろ俺の方が、遊んでもらってます」

「いえ、そんな……
 この間も、ご飯を食べれるようにしてくれましたし、本当に感謝しています」

「いえ、なんもしていないですよ」

「あ、そう言えば、自己紹介がまだでしたね。
 私は、歩の母親の石田 稲穂(いしだ いなほ)と言います」

「俺は、詩空 亜金って言います」

「はい……」

「で、どうしたんですか?
 こんな朝早くに……」

「貴方には言っておかなければなりませんね……」

「え?」

「歩、もう長くないのです。
 今は、薬で痛みなどは抑えれています……
 でも、術後の拒絶反応は、あるんです。
 なのに、辛いなどの表情を一切見せず、あんな元気に……」


稲穂さんは、そう言って涙を流した。
俺は、充君の言葉を思い出す。


 「歩ちゃんの手術、決して成功とは言い切れないんです」


そう、歩ちゃんの手術は、成功している訳じゃないのだ……
それを稲穂さんのこの表情で実感した。
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