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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年10月31日

晴れ。
今日で、10月が終わる。
つまり、明日で俺は29歳になる。
29歳、童貞、無職。

もう、全てが絶望的だ。


俺は、待合室の椅子の上でため息をついた。


「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」


美穂が、そう言って俺の隣で笑う。


「いや、ため息をつくことで不のオーラを吐きだしているんだ」

「そっか……」


美穂が、俺の体を後ろから会抱きしめる。


「な、なに?」

「好きになったって言ったら怒る?」

「え?」

「私、亜金のこと好きになったみたい」

「急に何を言っているんだ?」

「だから、いいでしょ?」


美穂が、耳元で囁く。


「何をするんだ?」

「言わせるの?」

「えっと……」


俺は、戸惑う。


「亜金は、鈍感だね」

「うん」


確かに捨てることは出来る。
だけど、俺は君の本当の名前も知らないんだ。
だから、ごめん……
君とは、することは出来ない。


「はぁ……」


美穂が、ため息をつく。


「うん?」

「いつか、いつか、やろうね……」

「そうだね」


君の正体が、わからない限り俺は、何も出来ない。


「その顔何か隠してるな?
 私たちの間に隠し事は無しだぞ?」

「美穂は、隠し事は、無いの?」

「え?」


美穂の顔が一瞬曇る。


「まぁ、いいや……
 俺も美穂に隠れてエッチなDVD見てるからいいよ」

「没収していい?」

「見るの?」

「捨てる」

「じゃ、ダメだ」

「むー。ケチー」


美穂は、俺の耳元で騒ぐ。
だけど、俺を抱きしめる腕には、優しさが込められていた。
暖かい……
それが、どこか心地よかった。

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