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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月26日


隼人君が、俺の部屋に訪れる。


「ねぇ、亜金さんのお父さんとお母さんってどんな人?」

「普通じゃないかな……
 甘くもなければ厳しくもない。
 ただ、俺が甘えすぎて家を追い出されちゃったんだけどな」

「じゃ、僕と同じだね」

「うん?」

「無理心中ってヤツかな。
 車の中で手首を切って僕と妹のマコを車の中に閉じ込めて殺そうとしたんだ」

「そっか……」

「僕が、車から出ている間に車に火が移ってマコは焼死。
 マコは、あの時、生きていたんだ……
 今も耳から離れない。
 マコの『助けて、お兄ちゃん、熱いよ』って声が……
 マコは、最後まで僕に助けを求めていたんだ。
 なのに僕は何もできなかった。
 僕は助けたかったのに、大人たちの手によって阻止された……
 なんとか大人たちの妨害から逃げて車に近づいたら、車が爆発したんだ。
 それと同時にマコの声は聞こえなくなり、僕の左目は見えなくなった」

「……そうか」


なんて声をかけたらいいのかわからない。
何を言ってあげればいいのかわからない。


「親は、多額の借金を残して死んだ。
 会社を運営していて、それなにりお金持ちだった。
 それまでは、ニコニコ愛想笑いを浮かべてお金を借りに来た親戚のおばさんやおじさんたち……
 としてお父さんやお母さんの友人、知人たち……
 お父さんた沢山お金を貸していたけれど……
 お父さんの会社の経営がうまくいかなくなった途端、笑わなくなった。
 誰もお金も返してくれなかった。
 みんなが、返してくれていれば多分、返せた金額だと思う。
 でも、お父さんは何も言わなかった……
 何も言わずに僕たちを巻き込んで自殺した。
 酷いよね……そのうえ、僕をだれが引き取るかで揉めてたんだよ」

「うん」

「悔しくて悔しくて僕は、涙が溢れたんだ……
 アイツらは、お父さんたちを殺したのに被害者面して……
 そんなときにね、愛が現れたんだ……
 『こうすれば何も聞こえないよ』って、言って僕の耳を両手でふさいだ」

「そっか……
 その時に、愛ちゃんんと出逢ったの?」

「うん。
 その時に決めたんだ、僕は、もう泣かないって……」

「そっか……」


今日の隼人君は、おしゃべりだ。
俺は、暫く隼人君の話を聞いた。
俺には、それしかできることができないから……

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