ニートライター亜金の事件簿

9月5日


今日も雨。
昨日の夜、直美ちゃんのお通夜が行われた。
沢山の方が来てくれた。

会社の社員達。
直美ちゃんの友達。

合わせて1000人以上来てくれたのではないだろうか？


まぁ、MTTミンナの社長だったのだから、社員だけでもかなりの数が居たと思う。


親類関係は、一応来てくれていた。


俺が、喪主をしていたのだが、色んな事を聞かれた。


色んな話が出たけれど、どれもお金の話だった。

遺産は、俺には一円も渡さないとか。
遺言書は無効とか……

そんな事ばかりだった。


なんかどっと疲れた。


ロウソクの火が消えない様に俺はずっと見ていた。


啓司さんや御幸、銘さんが、変わろうかと言ってくれたけど……
俺は、それを断った。

少しでも長く直美ちゃんと一緒に居たかったから……


今、さっきお葬式が終わり今、火葬に向かう車が走り出した。


この時に鳴らすクラクションの音。

俺は、この音が直美ちゃんの断末魔に聞こえて仕方が無かったから……


直美ちゃんが使っていたお茶碗も割った。


この時、初めて薫ちゃんが泣いた。

お茶碗を割るのが嫌だったらしい。

俺も嫌だけど、お茶碗を割った。


これは、亡くなった人が戻ってこないようにする為。
ご飯の時にその人がご飯を食べに戻って来ない様にする為。


薫ちゃん曰く、ご飯を食べに戻ってきて欲しいらしい。


薫ちゃんが、テレパシーではなく口でそう言った時、俺は泣きそうになった。
まぁ、お茶碗を割ってもこの世に残っている霊もいる。
この世に残る時間が、長ければ長いほど悪霊化する可能性が高い。


千春は、特別なんだと思う。


亜銀の魂も橘勤に食べられたのだろうか？
それは、俺には解らない……


成仏していてくれと思うばかりだ……


直美ちゃん。
君の魂も食べられたのだろうか？

もしも食べられていないのなら一目だけ一目だけ俺の元に現れてくれ……


俺は、静かに手を合わせた。


※この物語は、フィクションです。

タグ：亜金 小説 ニートライター