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亜金友人帳 [亜金友人帳]

4月30日



「どうしてこんなところで泣いているんだ?」


女の子は、そう言って地面を蹴る。
シーソーが動く。


「泣いてなんかいないよ」


僕も地面を蹴る。
シーソーが動く。


「泣いているじゃないか……」


女の子が地面を蹴る。
シーソーが動く。


「……泣いてなんかいないもん」


僕は、そう言ってうつむく。


女の子は、シーソーから降りて僕の方に来る。
その時になって初めて分かった。
この子は、妖怪だと……


「ほら、涙が出ているぞ」


女の子は、そう言って僕の涙をハンカチでぬぐった。


「うるさい!
 妖怪なんかに僕の気持ちがわかるか!」


女の子は、一瞬だけ悲しい顔をした。
だけど、すぐに表情を戻した。


「私だって人と同じように心を持っている……
 だから、お前の気持ちわからなくもない」


僕は、何も答えなかった。
ただ、酷いことを言ってしまった。
妖怪だって心を持っていることくらい僕にでもわかった。


「ごめん」


僕は、謝った。


「気にするな」


女の子は、そう言って僕の体を抱きしめる。
甘い匂いがした。


「君……
 名前は?」

「私か?
 私の名前は、玉藻、お前は?」

「僕?
 僕は、亜金だよ」

「そうか……
 亜金、お前は今日から私の友達だ」

「友達??」

「ダメか?」

「うんん。
 僕、ずっと友達って言うのに憧れていたんだ……
 僕、友達なんて出来たことないから……」

「そうか……
 人間は、妖怪が見えると友達が出来ないと聞いたことがある。
 すまない、私は、お前に関わらないようにした方が良かったのかも知れない」


玉藻は、そう言って悲しい表情を見せた。


--

「そんなことないよ。
 僕は、嬉しい。
 でも、僕は、明日にはこの街を離れるんだ……
 だから、すぐにお別れしなくちゃいけない……」


僕は、泣きそうになった。


「亜金。
 今は私は、お前以外の人間には見ることが出来ない。
 だけど、妖力が高い妖怪は、人間にも見えるようになるらしい。
 だから、大人になって私が強くなったら……
 お前に会いに行ってもいいか?」

「……会いに来てくれるの?」

「ああ。
 絶対に会いに行く……」

「……楽しみにしてるね」

「ああ。
 そうだ、お前にこれをやろう」


玉藻は、そう言ってリュックサックから一冊のノートを取り出しそれを僕に渡した。


「これは?」

「これは、“友人帳”
 友達になったモノの名前を書くと、書かれたモノは持ち主が、本当に必要としたとき助けに来ることができると言う優れものだ」

「友人帳……」


僕は、そう言ってそのノートを見つめた。


「そろそろ時間だ……
 亜金、今度会うときまでには、もう少し強くなっておけよ……」

「うん!
 もっと強くなるよ!」

僕は、顔をあげた。

目の前には、誰も居なかった。


「玉藻……?」


帰っちゃったのかな?


僕は、ノートをしっかりと抱きしめた。
そうだね。
玉藻、僕は僕を辞めるよ。
僕は僕を辞め俺になる。
少しでも強くなれるように……


俺は、そう思うとゆっくりと家に帰った。
結局俺は、施設に行ったり親戚の家を行ったりすることになった。


「亜金……
 大丈夫か……?亜金……」


優しい声が聞こえる。

俺は、目を開ける。
すると玉藻が心配そうに俺の顔を覗いている。

夢だったのか……?


「俺、どうなったんだ?」

「頭にボールが当たり気絶した。
 マンガみたいな光景だったぞ……」

「ごめん。俺、強くはなれなかったみたいだね……」

「思い出したのか?」


玉藻は、そう言って俺の目を見る。


「うん。思い出したよ」

「大きくなったな亜金」


玉藻は、そう言って俺を抱きしめる。
恥ずかしいけど今はこのままでいい……

俺は、そう思い顔を真っ赤にさせながら玉藻の温もりを感じた。


※この物語は、フィクションです。

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