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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年06月22日

歩ちゃんの様態は安定していて、暫くすれば前と同じように遊べるようになるらしい。

歩ちゃん、死ななくてよかった。
俺は、心の底からそう思った。

でも、問題なのは俺だ。
こう安心している中、やっぱり死にたいと言う言葉が頭をよぎる。
でも、俺の頭の中には腫瘍がある。

放っておいても死ぬだろう。
不思議かな?死にたいけど死ぬのは少し怖い。


俺が死んだらどうなるんだろうな?
誰か泣くのかな?


そんな事を思うと少し切なくなった。


「生きてるか?」


美穂が、そう言って俺の病室に入って来た。


「俺は、もう死んでいる」

「そんな、冗談が言えるくらい元気があってよかった」

「そうだな……」

「うん」

「今日、仕事は?」

「お休みを貰ったよー」

「そうか……」

「私が来ると迷惑?」

「いや、嬉しいよ」


俺は、そう言って笑う。


「今日、デートしない?」


美穂の突然の提案に俺は、驚いた。


「でも、デートって……
 外出許可なんて貰ってないぞ?」

「院内デートしよう」

「まぁ、それくらいならいいけど……」


俺は、そう言うとベッドから降りた。
美穂が何を考えているかわからない。
だけど、逆らう理由も見当たらなかった。


庭に出ると子供達が、元気(?)に走り回っていた。
みんなパジャマ姿だから、病人だよな?

その中には、車いすに乗った歩ちゃんも混ざっていた。

子供たちは、俺に気付くとこちらに走って来た。


「一の兄ちゃん、女連れてるぞ!」


元太君が、そう言って俺達をからかう。


「この人、一さんの彼女ですか?」


充君が、そう言って目をキラキラと輝かせた。


「違うよ。
 同居人なの」


美穂が、間髪いれずに答えた。

うん。
そうだけど、なんかそうハッキリ言われると寂しいな。


「明日も、ここで遊んでいるから、お兄さんまた来てくれる?」


歩ちゃんが、消え入りそうな声で言った。


「ああ。
 必ず来るよ」


俺は、そう言って笑った。
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