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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年07月30日


部屋の温度は、18℃。

萌ちゃんの要望だった。
体が火照るらしい。
俺達は、上着を羽織っていた。


コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。

太郎が、返事をした。

すると千春ちゃんが、ティーカップとホットミルクが、入った容器を持ってきた。


「寒いと思うから、ホットミルクを持ってきたよ」


千春は、全員のカップにホットミルクを入れた。

部屋には、ホットミルクの香りが充満した。


「あ~~
 良い匂い……」


思わぬ場所から、声が聞こえた。
萌ちゃんは、もう目を覚まさないかもしれない。
そう言われていたのに目を覚ました。


俺たちは、安心したように笑った。


「私は、冷たいいちごミルクがいいな」


萌ちゃんが、そう言ってほほ笑んだ。



萌ちゃんは、笑いながらそう言った。


「じゃ、私が買ってくる」


千春ちゃんが、そう言って部屋を出た。


銘先生が、萌が話しやすそうにベッドの角度を90度に傾けた。

そして、小さな小さなティーパーティーを開いた。

そこに居るのは、同年代の男女。
そして、俺と太郎と萌ちゃんは、幼馴染。

話のタネなんだ幾らでもあった。


それから、一時間程話した時、萌ちゃんは眠そうな声で言った。


「なんだか、眠くなってきちゃった……」


萌は、そう言うと、すぐに眠りに就いた。

萌ちゃんに繋いでいる血圧計。
それは、ゆっくりと少ない数値を刻んでいった。

最高血圧は、50を切った。


午前10時48分。


彼女は、ゆっくりと寝息を立てた後、この世で最後の空気を吸い込み、そして息を引き取った。


享年28歳。
俺と同じ歳だった。


千春ちゃんが、ゆっくりと銘先生の方を見る。

でも、銘先生は、辛そうな表情をしていた。

気持ちは、少しわかる気がする。

きっと銘先生は、この場だけは、医師としてではなく友人としてその場にいたいのだろう。

でも、すぐに表情を変えて臨場を伝えた。


皆、無言の中。
セミだけが、鳴きつづけていた。

ただ。
ただ。
ただ……
ただ、ひたすらに……

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