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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年08月09日


目が覚めたのはいつもの病院のベッドの上。

昨日意識を失って、そのまま今日を迎えた。

頭には包帯が巻かれていた。

口も痛い。


「あ。
 亜金、気づいた?」

「美穂……?」

「うん。
 美穂だよ」

「怪我してない?」

「私は、大丈夫だよ」


美穂が、クスリと笑う。
俺は、ゆっくりと体を起こす。
体中が痛い。


「そうか……
 なら、よかった」

「私、ケンカ強いから……」


美穂が、クスリと笑う。
そう言えば、合気道3段とか言っていたな。


「そうだったな」

「んで、あの男は、どうなったんだ?」

「逃げたよ」

「そっか……」

「うん」

「ゆかりさんが、どうのこうの言っていたけど。
 あのゆかりさんじゃないよね?」

「たぶん、違うと思う。
 あの男が探していたのは、杉山ゆかりさん。
 美穂が知っているのは、田村ゆかりさんだから……」

「そっか……
 なら、安心だね」

「そうだな……」

「それ、私だよ」


女の人の声が、ドアの方から聞こえる。
そこに居たのは、ゆかりさんだった。


「私、結婚していた時は、杉山ゆかりだったんだ。
 だから、それ、私だよ」

「え?」

「田村ゆかりは、旧姓なんだ……
 ごめんね、亜金君。
 巻き込んでしまって……」


ゆかりさんは、ぼろぼろと涙を零した。
美穂は、ゆかりさんの方に近づきぎゅっと抱きしめた。


「亜金もゆかりさんも、私が護るから」


美穂が、そう言った。
ここは、俺が「俺が護る」って、言うべきなんだけど言えない自分が情けない。


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