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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年08月31日


今日は晴れ。
8月の最後。
今日、ゆかりさんは、退院した。


「亜金君、またね……」


ゆかりさんが、そう言って俺の手を握り締める。


「うん、またね……」

「北海道に来ることがあれば、遠慮なく美穂ちゃんと2人でウチに来てね」

「ありがとう」


俺が、そう言うとゆかりさんは、ニッコリ笑う。
そして、美穂の方を向く。


「亜金君のことお願いね」

「うん。
 任せて!亜金は、お爺ちゃんになっても面倒見るから!」

「うん!
 幸せになってね!」

「うん!」


2人はあつい抱擁をした。

そして、ゆかりさんは、見送りに来た子供たち1人1人に言葉を送った。
みんな、涙は、流さない。


こういう別れは、いい別れなんだ。

たぶん、みんな、自分にそう言い聞かせているのだろう。


「みんな、さよならは、言わないよ!
 だって、私は、またみんなに会いに来るから!」


ゆかりさんは、そう言って車の中に乗った。
そして、最後の最後まで窓から手を振っているのが、俺の目には見えた。


「はぁ……
 なんか、寂しいね」


山本さんが、小さく呟く。


「山本さん、居たんですか?」

「ずっと最初から居たよ。
 ゆかりちゃんも、きちんと挨拶してくれたよ」

「そ、そうですか……
 気づかなくてすみません」

「まぁ、なんだ……
 明日は、気分転換にたこ焼きパーティーでもやるか」


山本さんが、そう言うと子供たちがはしゃぐ。


「たこ焼きパーティー!?」

「久しぶりですね!」

「たこ焼きくるりんこ♪」


歩ちゃんたちが、歌う。


「楽しみだね」


美穂が、ぎゅっと俺の手を握り締める。


「そうだな……」


俺は、空を見上げる。
これは、セミがまだ鳴き続ける、8月の終わりの日のことだった。

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