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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年10月29日


今日の昼間に歩ちゃんのお葬式が行われた。

葬儀に行く前に近所のスーパー内の散髪に行ってきた。
15分1000円で、安い。
髪の毛も、長い間切っていない。

だから、伸び放題のぼっさぼさ……

なので、葬儀の前に切ってもらった。

かなり、すっきりした。


でも、心の中はからっぽ。


何にもない。

ただ、ひたすらに空っぽだったのだ。


歩ちゃんのは、学校の友達はいない。
稲穂さんの話によると、幼稚園に行く前から闘病していたらしい。

だから、病院外の友達はいない。

歩ちゃんは、前に言っていた。


「学校に行きたい」と……


俺は普通に学校に行って、バカやって教師に怒られて虐められて泣いて……
それの繰り返しだった。
だから、俺にとって学校は、嫌な場所でもあった。
成績の悪い俺は、家でも居場所はなかった。
家では、煙たがられいい扱いを受けてこなかった。
居場所を失い、美穂が居場所になってくれた。
そして、美穂を失ったと思い込んだ俺は、自殺未遂した。


でも、歩ちゃんは、賢明に生きたいと願っていた。
歩ちゃんだけじゃない充君だってそうだ。
学校に行って、勉強して、バカやって教師に怒られて……
そんな世界を経験したかったと思う。


俺は、何をやっているのだろう?
俺に出来ることは何?

なんにもない、なにもできない。


歩ちゃんが、火葬場に向かう……
歩ちゃんが入院する前に使っていたお茶碗を割った。
お茶碗を割る稲穂さんの手が震えていた。


かけてあげれる言葉もない。
そもそも言葉が、見つからない。


こんな時、なんて声を掛ければいい?
俺は、散らばった茶碗を眺めることしかできない。


元太君、愛ちゃんは、しきりに歩ちゃんの名前を呼んで泣いている。
隼人君は、下唇を噛み涙を堪えている。


歩ちゃんが、火葬場へと向かう黒い車……
その車が、クラクションを鳴らす。


俺は、この音が大嫌いだ。
心が、痛くなり泣きそうになる。
でも、涙が出ない。

泣きたいのに零れない涙……
正直辛い。

悔しくて悔しくて辛い。


俺は、歩ちゃんに何をしてあげれた?
一緒にポケモンで遊んで、また会おうねと手を振ってわかれる。
もう、その光景を見ることが出来ない。


俺は常々思う。
俺は、無力だ……

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