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ギフト(小説) [ギフト(小説)]

2013年02月01日


1月が終わり2月がやってきた。

寒い寒い2月だ……

病院の方は、ほぼ破壊されたので夕貴さんは、転院することになった。
次の転院先は、大勢のギフト能力者が集まり警護にあたるらしく、俺はクビになってしまった。

でも、夕貴さんには、いつでも会いに行っても良いと水菜議員に言われたでちょこちょこ顔を出そうと思う。


「今日は、暇そうっすね」


太郎がそう言ってアップルパイを出してくれる。


「お?これ、サービスか?」

「はい、愛娘のお手製っす。
 遠慮なく食べてください」

「これ、桃ちゃんが作ったの?
 とても5歳児が、作ったモノには見えないんだけど……」


俺が、感心していると玉藻が、喫茶萌萌の扉を開けて中に入った。


「盛り上がっているな」

「うん。これ、桃ちゃんが作ったんだって!
 玉藻も食べてみなよ」

「うむ……
 亜金は、食べたのか?」

「いや、まだだけど……」

「……これは、他の客には、出しているのか?」


玉藻は、太郎に聞いた。


「出してないっすよ。
 亜金さんが、初めてっす」

「そ、そうか……
 亜金、先にお前が食べろ」

「え?」

「そうっすね。
 亜金さん、ガブリと一口お願いします」

「う、うん……」


俺は、一口そのアップルパイに噛り付いた。

リンゴの果汁が口いっぱいに広がり、それでいてパイ生地もしっかりしている。
一言感想で現すと……


「うまい……」


俺は、目を丸くさせて驚く。
玉藻も、一口アップルパイを口に運ぶと同じ感想を言った。


「とても5歳児が、作った食べ物とは、思えないぞ?」


玉藻の一言で、太郎の目に涙が浮かぶ。


「そうっす……
 桃は、ギフト能力に目覚めてしまったっす」

「え?
 なんで??」

「医者の見立てでは、萌さんを手伝いたいって言う思いが強く、その想いでギフト能力に目覚めてしまったっす」

「そっか……」

「萌は、何を失うんっすか?」

「え?」

「ギフト能力ってそういうことっすよね?」


太郎の表情が曇る。


「大丈夫。
 ギフト能力は、先に何かを失う。
 これから何かを失うってことはないし、料理がうまくなるギフト能力程度ならそんなに大きなものは失ってないはず……」


俺が、そういうと少しだけ太郎の表情が明るくなった。
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