SSブログ

ギフト(小説) [ギフト(小説)]

2013年02月14日


今日は、バレンタイン。
年に一度のバレンタイン。


だけども俺には、チョコはない。

萌ちゃん、玉藻ちゃん、杉浦さん。

一見、女の子は周りにいる方なんだけど誰一人チョコレートをくれない。
悲しいかな。

俺は、生まれてこの方、義理チョコひとつ貰ったことがない。

俺は、久しぶりに夕貴さんの居る病院に向かった。
夕貴さんの病室に入ると、夕貴さんはうつむいていた。

そして、俺に気付くと苦笑いを浮かべた。


「なんかあった?」


俺は、挨拶よりも先にその質問をしてしまった。


【御幸さんにフラれてしまいました】


夕貴さんは、そうフィリップに書いた。


「そっか」


夕貴さんの手元にはくしゃくしゃになったマフラー。
テーブルの上には手紙が添えられた箱が置いてあった。
包装紙には、GODIVAの文字が……
きっとチョコレートだろう。


御幸と啓司は、悔しいほどモテた。
歌もそこそこモテてたし、太郎は太郎で、萌ちゃんや数名の女子からチョコを貰っていた。
みんな義理じゃない、本命チョコだ。
俺は、玉藻からさえもチョコをもらってない。
寂しきかなだよ……


俺の表情を察してか、夕貴さんは机の上をトントンと叩いた。


「どうしたの?」


俺が、夕貴さんに尋ねると夕貴さんは、ベッドから降りる。
そして、冷蔵庫から箱を出して、それを俺に渡してくれた。


「これは何?」


俺の問いに夕貴さんが、優しく笑う。


【開けてください】


夕貴さんが、フィリップにそう書いてくれたので俺は、開けた。
するとそこには、チョコレートが入っていた。
メーカー品じゃないチョコレートだった。


【調理場を借りて作りました】

「え?
 でも、そっちの方が、御幸は喜んだんじゃ……」

【あの人は、受け取ってくれないと思ってましたから……】


夕貴さんの文字は震えていて夕貴さんの体も震えていた。


「でも……」


俺は、そこまで言いかけると夕貴さんは、自分の人差し指を俺の口に当てた。


 言わなくてもわかっているから……


夕貴さんの目は、そう語っていた。


「チョコ、食べてもいい?」


夕貴さんは、コクリと頷いた。
俺は、チョコレートをひとかけらつまむと口に運びこう言った。


「おいしい」


夕貴さんは、優しく笑った。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

バレンタイン見えない壁 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。