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ピノの旅(小説) [ピノの旅]

――4月2日


俺は、一日悩んだ。
笹鈴さんと座来栖君は、城に帰った。
俺とピノは館の中で外を眺めている。


「あのお空から降って来るお水は何?」


ピノは、そう言って雨を指さした。


「あれは、“雨”と言うんだよ」

「雨?
 雨って、どうして空から降って来るの?」

「えっと……」


俺は、回答に困った。
俺も詳しい理由は、知らない。
雨は、次第に激しくなり雷が鳴る。


「あのピカピカゴロゴロはなに?」

「あれは、雷だよ」

「へぇー」


ピノは、雷を真剣な眼差しで見る。
そっか、ピノは、雨も雪も雷も知らないんだ……


「ピノは、雪を見たい?」

「雪、見れるの?」


ピノは、振り返り俺の方を見る。


「うん!
 ピノ、雪みたい!」

「そっか……」


プレゲトンが、部屋の中に入って来る。


「紅茶を持ってきたぞ」


プレゲトンが、そう言って机の上に紅茶を置く。
ピノは、興味津々で、その紅茶を見る。


「これは、何?」

「紅茶だよ」


俺が、そう言うとピノは静かに紅茶を見つめる。
プレゲトンが、紅茶を飲むとその仕草を真似してピノも紅茶をぐぐっと口の中に流し込む。


「あつーい」


ピノは、舌をペロッと出して涙を流す。


「プレゲトン……
 俺、旅に出たい」

「まだそんなことを言ってるのか?」

「ピノに色んな世界を見せたいんだ……
 雪も雨も雷も知らないんだ……
 ピノに色んなモノを見せてあげたい」

「そうか……」


プレゲトンが、そう言うと窓の外を見る。


「初めてだな。
 亜金が、誰かのために何かをしてやりたいなんて言ったのは……
 わかった。私からも清空や白銀に頼んでみよう」


プレゲトンは、そう言ってニッコリとほほ笑んだ。
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