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亜金友人帳 [亜金友人帳]

4月28日



「ひっく、ひっく……」


泣き声が聞こえる。

あぁ……
この声、聞き覚えがある。
俺の声だ……


「お父さんお母さんお姉ちゃん……
 僕を置いて行かないで……」


俺は、あの頃は、毎日泣いていた。
毎日毎日泣いていた。


泣きながら歩く俺……
少し歩けば六花が俺の足と足の間を通り抜ける。
その度に、俺は、転ぶ……


「六花……
 歩けないじゃないか……」

「にゃー」


六花は、悲しい声で鳴く。


「そうか、六花も悲しいんだね……」


俺は、そう言うと六花の体を抱きしめる。


俺は、ゆっくりと部屋の中へと入る。
すると話し声が聞こえてきた。


「で、誰があの子を引き取る?」

「ウチは、ダメよ?
 子供が4人もいるし……
 この不景気にあと1人も増やせないわ」

「私も嫌よ……
 あの子、気味が悪いし……」

「そうね……
 何か変よね……
 幽霊でも見えるんじゃないかしら?」

「止めてよ姉さん、気味が悪い……
 あの子見た目も気持ち悪いし……」

「いっそうのこと施設に行ってもらうか……?」

「そうね。
 それがいいわ!」


親戚の叔父さんたちが、俺のことで揉めていた。

あぁ、嫌な夢だ……
今になってこんな夢を見るなんて……


俺は、そう思いながらも夢の続きを見る。


「六花、行こう……」


俺は、ゆっくりと歩き自分の部屋に入る。


ずっと1人ぼっちだった部屋。
父さんも母さんもずっと病弱な姉につきっきりだった。
だから、この時、不思議と寂しさは薄れていっていた。


それでも、じわじわと孤独が押し寄せる。
それが怖くて怖くて仕方が無かった。


「お姉ちゃん……
 僕、お姉ちゃんに会いたいよ……」


俺は、その場にうずくまっていた。


※この物語は、フィクションです。


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