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ピノの旅(小説) [ピノの旅]

――4月3日


今日、笹鈴さんと座来栖君が、俺の屋敷を尋ねてきた。


「あ、笹鈴さんに座来栖君どうしたの?」


俺は、遊びに来てくれたのかと思い嬉しくて心の中でははしゃぎながら、館に招いた。
俺にとって友達が、館に客人として来てくれるのは産まれて初めてだったから……


「あのね、亜金ちゃ」


笹鈴さんが、言いにくそうに言葉を放つ。


「どうしたの?」


その表情を見ると俺も不安になる。


「笹鈴、こういう時ははっきり言った方がいい」


座来栖君が、ため息交じりに答える。


「あのね、亜金ちゃ。
 私、城を出なくちゃいけなくなったの」


笹鈴が、申し訳なさそうに言う。


「え?
 どうして?」

「母が、あんな感じだったでしょ?
 だから、その娘の私がずっと城に残るわけにはいかないの」

「そんな……」

「本当なら、絞首刑とかギロチンとかの可能性もあったんだよ?
 でも、街の人がそれは許してくれたの……
 今度、選挙が行われて、別の人が王様になるの」

「そっか……」


寂しい感じがした。


「でね、今日、もうこの街を出なくちゃいけないの。
 だから、亜金ちゃとは今日でお別れ……」

「そんな!」


俺は、泣きたくなった。


「短い間だったけど亜金ちゃとの思い出は大事にするね」


笹鈴さんが、笑う。


「そう言う訳だ、亜金、元気でな」


座来栖君が、ニッコリと笑う。


「座来栖君は、笹鈴さんと一緒に旅をするの?」

「ああ。
 俺は、笹鈴に忠義を誓ったからな。
 笹鈴に婿が見つかるまでずっと傍にいる」

「そっか……」


その関係が、少し羨ましく感じた。
俺には、そういう人って誰もいなかったから……
笹鈴さんと座来栖君は、暫く俺と雑談してくれたあと、館を出て街を出た。
また逢える時が来るといいな……

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