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クリスマス・イブ・ショート・ショート [短編]

キャンドルがともり、 くつしたの影がゆれています。

現れたのは、1匹の小人でした。

小人は、刃物を持ち。

プレゼントを待って眠っている女の子を嬉しそうな目で見ます。


「今日のは、ご馳走だ」


小人は、そうって刺しました。
いっぱい刺してはそれを口に運び「うまい、うまい」と言って夢中でむさぼります。

そして、全てを食べ終えるとこう言いました。


「美味しかったよお嬢さん」


そして、小人は、クマのぬいぐるみをそっと枕元に置きました。


「また、来年も来るからね」


小人は、ゆっくりと女の子から、離れると静かに消えました。


女の子の元に残ったもの……

それは、クマのぬいぐるみとほんの少しのミルク……
そして、クッキーの食べかすでした。

朝が来ます。

女の子は、目を覚ますとクマのぬいぐるみを見つけ大はしゃぎ。


「ママー!
 サンタさんが、来たよー」



女の子のお母さんは、「そう、よかったねぇー」と優しく微笑みました。


おわり
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いちごミルク [短編]

「あ~~
 いい匂い……」


それは、千春ちゃんが用意したホットミルクにより目を覚ました萌ちゃんが言った一言だった。

その場に居た人達は、誰もがもう萌ちゃんは目を覚まさないと思っていた。

そんな皆の不安をよそに萌ちゃんはいつもののんびりとした口調で言葉を続けた。


「私は、冷たい……
 いちごミルクが飲みたいな」


もう8月が終わろうとしている。
萌ちゃんの希望により空調は18℃。
萌ちゃんの夫である太郎。
そして、その子供である瓜と桃。
千春ちゃんに銘先生にそして俺……

みんな上着を着ていた。

だけど彼女だけは薄手のパジャマを一枚着ているだけだった。
それでも、彼女はベッドに気持ち良さそうに横になっていた。


「クーラーが気持ちいね」


萌ちゃんは、そう言って笑った。
俺達は、最後の萌ちゃんとの小さな小さなティーパーティーを開いた。



--


時は、さかのぼってほんの少し前。
セミが鳴きはじめた頃の出来事だった。


俺は、病院を抜け出し萌ちゃんの喫茶店に来ていた。
カウンターでコーヒーを飲んでいると萌ちゃんがしきりに胸を気にしていた。


「どうかしたの?」


俺が、そう尋ねると萌ちゃんは苦笑いを浮かべた。


「なんか、胸の付け根あたりにシコリができちゃって……」


俺は、何故か嫌な予感がした。


「少し触っても良い?」

「ダメ!
 スケベ!」


そう言って萌ちゃんが笑う。


「じゃ、私が触っても良い?」


そう言ったのは、俺の隣に座っていた銘先生だった。


「銘先生にならいいかな……」


銘先生は、頷くと萌ちゃんの胸を触った。


「んー。
 確かに小石のような硬いモノがあるね……」


萌ちゃんは心配そうな声で尋ねた。


「なにかの病気かな?」

「なんとも言えないけど……
 少し心配だから早めに病院に行った方がいいよ?」


銘先生が、そう言うと萌ちゃんは、ゆっくりと頷いた。


「時間がある時に行くね」


萌ちゃんは、苦笑いを浮かべながらそう言った。


--


それから、暫く立った日のこと。
俺は、病院の待合室で萌ちゃんに会った。


「あれ?
 萌ちゃんどうしたの?」

「あ、一君……」

「どうしたの?」

「私、乳がんなんだって……」

「え?」

「今、太郎君が、私の病状について説明を受けてるの……
 私、もう長くないかもしれない……」


萌ちゃんは、元気なさげに呟いた。


「大丈夫だよ。
 太郎は、きっと簡単な説明を受けているだけだから……」

「でも、入院するんだよ?」

「じゃ、入院の説明をしてるんだよ……」

「そっかな?」

「うん!」


俺と萌ちゃんは、そこで別れた。
そして、それから病院内をブラブラ歩いていると、太郎と会ってしまった。


「あ、太郎か?」

「あ、一さん……
 お久しぶりっす」

「萌ちゃんと結婚したんだってな?
 おめでとう」

「ありがとうございます」


太郎は、少し辛そうな表情を見せた。


「どうした?」

「少し話いいっすか?」

「ああ……」


俺は、太郎に連れられて病院の屋上にやってきた。



--


「萌さん、もう長くないらしいっす……」


俺は、その太郎の一言で頭の中が真っ白になった。


「どういうことだ?」

「乳がんらしいっす……」

「な……さっきまで普通に元気に話していたぞ?
 ってか、俺は、『大丈夫』って、言ったぞ?」

「ありがとうっす」

「担当は、銘先生がやってくれるらしいっす」

「そっか……」

「付き合ってくれてありがとうっす。
 一さんは、何処か悪いっすか?」

「俺は、脳腫瘍らしい」

「そうなんすか?」

「ああ……」

「まぁ、俺はなんとか大丈夫だ。
 心配なのは萌ちゃんだな……
 この事は、子供達には話しているのか?」

「……いや、まだっす」

「そうか……」


太郎の表情が暗い。

まぁ、明るい表情が出来る方が可笑しいだろう……

俺は、それ以上聞かないことにした。


--

俺も萌ちゃんの入院の瞬間に立ち会っていた。
萌ちゃんは、俺や太郎の不安等他所にベッドの上で騒いでいる。


「ベッドがふわふわだね」


今年で28歳になる萌ちゃん。
まるで子供の様にはしゃいでいる。


そして、一瞬固まる。


「萌さん、どうしました?
 胸、痛みますか?」


銘先生が、心配そうに萌ちゃんに近づく。


「大丈夫だよー
 私、病院のベッドに憧れていたんだー
 思っていたよりふわふわで気持ちいいよー」


萌ちゃんが、そう笑うと俺の方を見た。


「私、いちごミルク飲みたい」

「んじゃ、売店で買ってくるッす」


太郎が、そう言うと萌ちゃんは、太郎の袖を掴んだ。


「あー。
 いいよ、俺が買ってくるから……
 銘先生、ちと付き合って下さい」

「あ、はい……」


俺と銘先生は、病室を出た。

病室を出た瞬間、萌ちゃんのすすり泣く声が聞こえた。

部屋には太郎と二人きり。
萌ちゃんは、強い。
だけど、太郎の前だけは弱さを見せていた。

出来るのなら、抱きしめて勇気づけてあげたい。
だけど、それをするのは、俺じゃない。

太郎。


萌ちゃんのこと、きちんと守ってやれよ!


俺は、そう思うと少し遠回りして売店へと向かった。


--


「優しいんですね」

「え?」

「萌さんの事、気を使ってあげたんでしょ?」

「まぁ、俺も大人ですからね」

「あはは」


銘先生は、小さく笑った。


「萌さん、もうすぐ麻酔医が来て注射をするんだ。
 それまでに、いちごミルク届けてあげましょ」

「そうだな……
 でも、太郎と二人きりにさせてあげたい気もする……」

「難しいよね……」


そんな話をしながら、売店に向かいいちごミルクを買い萌ちゃんが居る病室へと戻った。

俺が、ドアに手を当てるとこんな声が聞こえてきた。


「怖いよ……
 ヤダよ……」


それは、きっと心の奥まで見せる事が出来る太郎だけへの弱音だろう。


「手術、絶対成功させて下さいね」


俺は、小さく呟いた。


「はい。
 全力を尽くします」


銘先生が、そう言うと銘先生のスカートを引っ張る小さい男の子とその男の子の手を握り締める女の子が居た。


「えっと……」


戸惑っていると銘先生が、腰を下げ子供達の目線に合わせた。


「瓜君と桃ちゃん……」

「お母さんの病気治る?」


瓜君が、そう言って銘先生の目をじっと見る。


「お姉ちゃん、全力を尽くすから……」


銘先生は、そう言うとガッツポーズをした。

その後、俺は、何気ない顔で萌ちゃんの病室に入った。


--


「ラブラブのお二人さん。
 お邪魔の様だけど、いちごミルクをお持ちしました」


俺は、わざとらしくおどけてみせた。


萌ちゃんは、一瞬で涙を布団で拭うとニッコリと笑った。


「一君、面白いね……
 昔と変わらないねー」

「いいから、これ飲め!
 そして、手術頑張れよ」

「うん!」


萌ちゃんは、ニッコリと笑って俺からいちごミルクを受け取った。

それから、すぐに麻酔医が来た。
手術の時間は約8時間。

俺には、この時間がとてつもなく長く感じた。


子供達もこういう時に限って来ない。
美穂も出張でいない。


1人で待つ時間程長いモノは無い。


手術は成功した。


そう言って欲しかった。
だけど、現実と言うヤツはそんなに優しくない。

萌ちゃんの組織検査の結果、ガンの段階評価が5に達成していた。

太郎が、それを俺に教えてくれた。

太郎の顔は、涙でくちゃくちゃになっていた。

萌ちゃんは、手術後。
暫くしてから退院した。


それが、最後の帰宅になるなんて、萌ちゃんは知る由もなかった。


--


萌ちゃんが退院して家に戻り。
そろそろ子供達も不安から解放されようとした頃……

病院から救急車がサイレンを鳴らし出て行った。


いつもの光景だった。
見慣れた光景のはずだった。
深夜の1時……
眠れぬ夜の出来事だった。

俺の携帯が、鳴った。
発信者は太郎からだった。


「もしもし?
 太郎か……?」

「萌さんが、意識を失って倒れたっす……」


俺の頭の中が真っ白になった。


萌ちゃんが、目を覚ましたのはそれから二日後の事だった。


「あ、一君おはよう」


それは、俺がお見舞いに来ている時だった。
俺は、すぐにナースコールを鳴らした。


「ここ病院のベッドの上っすよ。
 萌さん……倒れた事は覚えてるっすか?」


太郎が、優しく萌ちゃんの手を握り締めた。


「私、もうダメなのかな?」


萌ちゃんが、涙を流しながら呟いた。


「そんなことない!」


太郎は、強い口調で言った。

認めたくなかったのだろう。
認めてしまうと言うことは、萌ちゃんの病気も受け入れなくてはいけないから……
だから、もう一度繰り返した。


「大丈夫!
 大丈夫だから!」


その声は、消え入りそうな声で……
そして、力強かった。


「もういい……
 もういいよ……
 ヤダよ……死にたくない、死にたくないよ!」


萌ちゃんは、大粒の涙を流して叫んだ。


こんな話を聞いた事がある。

人は自分が死ぬとき、その死期を感じてしまうことがある。
恐らく萌ちゃんのこれもその一つなのだろう……


俺は、何を言えばいいのかわからなくなった。



--


萌ちゃんの叫び声を聞いた銘先生は飛んで病室にやって来た。
その表情は、とても疲れているようだった。

萌ちゃんは、ずっと涙を流していた。
2時間くらい泣いていたと思う。


そして、大きく息を吸い込むとこう言った。


「ねぇ。
 太郎君。
 子供たちに最後の挨拶をしても良い?」


萌ちゃんのその声は、覚悟を決めた声だった。
太郎は、唇をかみしめた。
太郎も覚悟を決めたのだ。


「……わかったっす」


太郎は、無理やり笑顔を作った。

太郎は、涙を拭うと病室を出た。


「銘ちゃん、一君、色々迷惑かけてごめんね……」

「迷惑だなんて思ってないわよ……
 ってか、迷惑だなんて本気で言ったら怒るからね!」


銘先生は、そう言って涙を堪えた。
医者である以上、銘先生は泣けないのかもしれない。


萌ちゃんは、「ありがとう」と言って小さく笑った。

--


暫くの沈黙。


何を言ったらいいのかわからない。
こんな時、色んな事を話せる人間だったら、幾分かマシな人生を過ごせたのではないだろうか?

俺は、そう思い窓の外を眺める。


「ねぇ、一君」

「なんだ?」

「一君って、まだ彼女とかいないの?」

「え?」

「彼女いないの?」


一瞬、美穂の事が頭に浮かんだ。
だけど、アイツは俺の彼女ではない。


俺は、軽く息を吸い込み。
そして、ため息をついた。


「相変わらず……だ」

「そっか……
 一君も悪いんでしょ?」

「え?」

「どこが、悪いのかわからないけど……」


別に萌ちゃんになら、言ってもいいか……


「俺、脳腫瘍なんだ」

「え?」

「そんなに長くないらしい」

「そっか……
 一君の表情が少し暗かったのは、そのせいかな……」

「ああ……」

「脳かぁー
 他の臓器なら、私のをあげれたのにね……」


萌ちゃんが、力なく笑う。


「ありがとう。
 気持ちだけ貰っておくよ」


俺は、そう言って苦笑い。
ほんの少しだけ、心が温かくなった。


--


「そうだ……
 お互い天国に行ったらさ……
 天国で結婚しよっか?
 まぁ、太郎君が来るまでの間だけど……」


萌ちゃんが、そう言って俺の目を見る。


「結婚?」

「うん」

「太郎が、聞いたら怒るぞ?」

「じゃ、太郎君には、内緒ね」


萌ちゃんが、クスリと笑う。

それにつられて銘先生も笑う。


病室のドアが、開かれる。


「萌ちゃん!
 千春ちゃんが、遊びに来たよー」


千春ちゃんが、元気な声で現れた。


「びっくりした……
 心臓が止まるかと思ったよ」


萌ちゃんが、目を丸くさせて笑う。
こんな時なのに、俺も何故か楽しくなってしまった。


「えー!
 心臓が止まられると困るなぁー」


千春ちゃんが、笑う。

誰の目から見ても、無理して笑っているのがわかる。
でも、この場を和ませるのには十分だった。


「賑やかっすね。
 なんの話をしてたんっすか?」


太郎が、賑やかな雰囲気の中に現れた。


「秘密」


萌ちゃんが、そう言うと俺達は、笑った。
この感じ……
学生時代を思い出して楽しかった。


--


萌ちゃんの息子である瓜君。
そして、萌ちゃんの娘である桃ちゃん。

その2人が、心配そうに萌ちゃんの方を見ている。


萌ちゃんが、ゆっくり息を吸い込んだ。


「二人に話があるの」


萌ちゃんは、そう言って二人を見た。


「お母さん?」


萌ちゃんは、瓜君の目を見る。


「瓜は、強い子だよね?
 だから、桃のことあまりイジメたらダメだよ。
 強い子は弱い子を護らなくちゃいけないんだから……」

「俺、桃のことちゃんと護る!」


萌ちゃんは、ニッコリと笑うと小指を出した。


「じゃ、ゆびきりだ!」


瓜は、震えながら小指を出した。


「ゆびきりげんまん♪
 嘘ついたらハリセンボンのーます♪
 指切った」


瓜は、ゆびきりを終えると、涙を零しながら部屋の隅っこへ向かった。
そして、座り込み声を出さずに涙を流した。


--


次に、萌ちゃんは、桃ちゃんの方を見た。


「桃……
 桃には色々苦労をかけてしまうと思う。
 もうちょっと大きくなったとき悩みが出来ると思う。
 その時は、銘ちゃんやちぃちゃんに相談してね。
 銘ちゃん、ちぃちゃん、その時はよろしくね」


銘先生は、頷き。
千春ちゃんは、「任せて!」と力強く言った。


萌ちゃんは、「お願いします」と言って軽く頭を下げた。
そして、萌ちゃんは、言葉を続けた。


「早く、お洗濯やお料理を覚えて太郎君の力になってあげてね」

「うん」


桃ちゃんは、涙を流す事なく。
じっと萌ちゃんの話を真剣に聞いた。


「じゃ、桃もゆびきり」


萌ちゃんは、そう言って小指だけをあげる。

桃ちゃんは、静かに母の元に小指を近づけ自分から歌を歌った。


「指きりげんまん
 嘘ついたらハリセンボンのーます
 指切った♪」


桃ちゃんは、涙を流さなかった。
小さくてもやっぱり女の子。
強いんだなと思った。


桃ちゃんの指が離れると、萌ちゃんは、太郎の方を見てニッコリと笑った。


「太郎君、後の事はお願いね……」

「任せて下さいっす」


太郎は、今にも泣きそうだった。


--


「瓜!桃!
 お父さんの言うことしっかり聞くのよ!」


桃ちゃんは、大きく返事をして、瓜君は涙を拭いて返事をした。


そして、萌ちゃんは、この時初めて子供の目の前で涙を流した。

まだ幼い瓜君や桃ちゃんが、どこまで理解しているかは、俺にはわからない。
だけど、二人は、真剣に萌ちゃんの話を聞いていた。


よく、子供には人の死の現場を見せるのはよくないという人が居る。
でも、この時だけは、決して悪いものではないのではないかと思った。


確かに、元気だった母親の姿を知る子供に、その母親の最後の姿を見せるのは、きつく辛いかも知れない。
だけど、この子たちが、やがて大人になった時、この最後の場面に立ち会わず、後悔しないと言い切れるだろうか?
血の分けた親子なのだ。


子は、親の温もりを……
親は、子の温もりを……
そして、温かい肉声を……


幼い子供にだって、母親の最後の最後まで感じる権利は、あるはずなんだ。

そして、子は命の大事さを学び、親の優しさや、厳しさをこうやって引き継いでいくのではないかと……

俺は、そう感じだ。
そう、思わずにはいられなかった。


そうして、一日が、終わった。

子供達は、別の部屋で休んでいる。

この部屋には、俺と銘先生と太郎だけが残っていた。
萌ちゃんは、静かに眠っている。

--


部屋の温度は、18℃。

萌ちゃんの要望だった。
体が火照るらしい。
俺達は、上着を羽織っていた。


コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。

太郎が、返事をした。

すると千春ちゃんが、ティーカップとホットミルクが、入った容器を持ってきた。


「寒いと思うから、ホットミルクを持ってきたよ」


千春は、全員のカップにホットミルクを入れた。

部屋には、ホットミルクの香りが充満した。


「あ~~
 良い匂い……」


思わぬ場所から、声が聞こえた。
萌ちゃんは、もう目を覚まさないかもしれない。
そう言われていたのに目を覚ました。

だから、俺達は、安心したように笑った。


「私は、冷たいいちごミルクがいいなぁー」


萌ちゃんは、笑いながらそう言った。


「じゃ、私が買ってくる」


千春ちゃんが、そう言って部屋を出た。


銘先生が、萌が話しやすそうにベッドの角度を90度に傾けた。

そして、小さな小さなティーパーティーを開いた。

そこに居るのは、同年代の男女。
そして、俺と太郎と萌ちゃんは、幼馴染。

話のタネなんだ幾らでもあった。


それから、一時間程話した時、萌ちゃんは眠そうな声で言った。


「なんだか、眠くなってきちゃった……」


萌は、そう言うと、すぐに眠りに就いた。


--


萌ちゃんに繋いでいる血圧計。
それは、ゆっくりと少ない数値を刻んでいった。

最高血圧は、50を切った。


午前10時48分。


彼女は、ゆっくりと寝息を立てた後、この世で最後の空気を吸い込み、そして息を引き取った。


享年28歳。
俺と同じ歳だった。


千春ちゃんが、ゆっくりと銘先生の方を見る。

でも、銘先生は、辛そうな表情をしていた。

気持ちは、少しわかる気がする。

きっと銘先生は、この場だけは、医師としてではなく友としてその場にいたいのだろう。

でも、すぐに表情を変えて臨場を伝えた。


皆、無言の中。
セミだけが、鳴きつづけていた。

ただ。
ただ。
ただ……
ただ、ひたすらに……


--


ふぅ……

Goccoで、掲載している、まっしろなティスタメントのワンシナリオが、完成したので、ここにも掲載♪♪



沢山の人に読まれますように><
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