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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月15日


雨がポツポツ降ってきた。

明日は、晴れるらしいけど……

土曜日は雨らしい。
流星群楽しみにしていたのにな。


俺は、待合室にてテレビを見る。
自分の部屋にもテレビがあるのだけど……
1人で部屋にいるのも何か鬱だ。


「あ!亜金さん」


千春ちゃんが、小走りで俺の方に来る。


「千春ちゃん、どうしたの?」

「望遠鏡の確保出来ました」

「あ、そういえばそんなこと頼んでいたっけ……」

「はい。
 でも、雨だそうですね……」

「うん。
 それ以前に愛ちゃんの様態が気になる」

「そうだね……」

「愛ちゃんが、一番楽しみにしているんだ」

「うん。
 願い事するんだって張り切ってた……」

「どうにか見せてあげる方法はないかな?」

「お天気と愛ちゃんの様態次第だよね……
 晴れてたら病院の屋上から見せてあげたいけど……
 どっちも難しそう」

「そっか……
 愛ちゃん、自分の先が長くないって思っているんだ」

「え?」


千春ちゃんが、目を丸くさせる。


「病気でもうすぐ死ぬって思ってる。
 だから、流れ星にお願いするんだと思う。
 『早く病気が治りますように』って……」

「そっか……」

「だから、見せてあげたいんだ。
 本当に寿命がもうすぐ来るのだとしても、見たこともない流れ星の数を……」

「そうだね……」


千春ちゃんが、元気なさげに呟く。
すると後ろから声が聞こえた。


「ダメです」


銘先生だった。


「銘先生……」

「今の愛ちゃん、相当危ない状態です。
 そんな状態で、外に出るのは……」


わかっている。
でも、どうにかしてあげたい。
そう思っているのは、俺だけじゃない千春ちゃんもそうだし銘先生もそうだ。
だから、俺はそれ以上何も言えなかった。

俺は、願う。

愛ちゃんの様態がよくなることを……

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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月14日


愛ちゃんが今日の朝早く目を覚ました。
俺は、それを聞いたすぐ後に美穂と一緒に愛ちゃんの病室に向かう。
愛ちゃんは、管につながれていて、とても苦しそうだった。
そばには隼人君が、辛そうな表情でこちらを見ている。
でも、俺と美穂を見た隼人君の表情はどこか安心したような表情だった。
俺に気付いた愛ちゃんが、精いっぱいの笑顔で弱弱しく笑う。


「あ、亜金さんだー」

「ああ、亜金さんだよ」


俺は、冗談ぽくいってみる。


「亜金さん、おはよう」

「ああ、おはよう」

「隼人君がね、ずっとそばに居てくれたんだよー」

「そうか、よかったな」


そして、俺はゆっくりと視線をずらして愛ちゃんのそばに居る老人夫婦を見る。


「あの……
 貴方たちは?」


老人夫婦は、俺たちの方を見て不安げに訪ねてきた。


「俺は、詩空亜金です。
 んで、こっちが……」

「杉並……美穂です」


美穂がそう言って頭を下げる。


「ああ、貴方たちが……
 愛から話はいっぱい聞いています。
 私は、この子の祖父の水野 清輔(みずの きよすけ)です」

「私は、その妻の希世(きよ)と言います」


2人は、そう言って深々く頭を下げる。


「私見れるかな?」


愛ちゃんが、心配そうに呟く。


「何を見るんだい?」


清輔さんが、そう言って愛ちゃんのそばに行く。


「17日の流星群……」

「大丈夫。
 きっと見れる……
 それに17日に見れなくてもまた次があるから……」


隼人君が、そう言って愛ちゃんの手を握り締める。


「次っていつかな?」

「それは、わからないけど……」

「その頃には、私たち結婚してるかな?」

「え?」

「私、隼人君と結婚したい」

「うん!そうだね。
 次のしし座流星群の頃までには結婚しよう!」


隼人君は、そう言って小さく笑う。


「約束だからね」


愛ちゃんは、隼人君と指切りをした。
俺は泣きそうになるのを必死に堪えた。

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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月13日


何か気まずい空気のままゲームをする気にもなれず、俺は病院内を彷徨う。

いつもと変わらぬ光景、いつもと変わらぬ風景に俺は心が少し痛む。

いつも俺が能天気にゲームをしていた時も、誰かが亡くなっている。
俺が、死にたかった一生は、誰かが生きたかった一生なんだ。

でも、そういうのを何も考えず俺は自殺した。
未遂に終わったけれど……

死のうとしたことには、変わらない。

ただ、この人たちと違うことはひとつある。
あの時、俺が死んで悲しむ人は誰もいなかった。


今、俺が死ねば、偽物の美穂は、悲しんでくれるだろう。


久しぶりに再会した友人、太郎と小太郎も悲しむだろう。
千春ちゃんや千代田さん、あとゆかりさんの耳まで届けば悲しんでくれるかもしれない。

だから、なんとしてでも生きなくちゃいけない。
死ねば悲しむ人が少なからずいるのだから……


俺は、ため息をつく。
たどり着いた先は、待合室。
山本さんとよくだべった場所だ。

色んな相談を聞いてもらったし、たこ焼きも教えてもらった。

正直、何かに自信をつけることなんてなかったけれど……

たこ焼きに関しては、美味しいと自信を持って言える。
初めて自信を持った瞬間だった。


「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」


そう言って俺の隣に隼人君が座る。


「授業はどうした?」

「授業なんて受ける気分になれないよ」

「そうか……」


まぁ、愛ちゃんがあんな調子だしね。


「隼人君と愛ちゃんは、仲が良かったけど前からの知り合いだったのかい?」

「この病院に来て初めてできた友達だよ」

「そっか……」

「うん。
 家族が死んだとき、泣いている僕をずっと励ましてくれたのが愛なんだ。
 かっこわるいよね。女の子の前で涙を流すなんだ……」

「そんなことはないぞ。
 男の涙も武器だ!」

「でも、僕は決めたんだ。
 愛を守るために涙を流さないって……
 僕が泣けば愛も悲しむ。
 愛の悲しむ顔を見たくないから……」

「そうだな……
 隼人君は偉いな」

「偉くはないよ。
 ただのカッコつけたがりだよ」

「まぁ、いい……
 何か飲むか?ジュースを奢ってあげるよ」

「じゃ、僕は、午後の紅茶がいいな」

「わかった」


俺は、自販機でジュースを買った。
うん。
やっぱりコーラは、美味い。

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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月12日


昨日も夜遅くまでGジェネをする。

看護士さんに見つかる前にゲームを止め眠ろうとしたとき……
廊下が騒がしい。


美穂が目を覚ます。


「何かあったのかな?」

「さぁ?」


俺は、ベッドから降りる。


「行くの?」

「うん。
 野次馬になってみる」

「私も行こうかな」

「うん」


美穂もベッドから降りる。
そして、パジャマ姿のまま俺たちは、廊下に出る。


「小児病棟の方が、騒がしい感じだね……」


美穂が、そう言って俺の腕を引っ張る。
なんだろう……


いやな予感がする。


小児病棟に着くと隼人君がいた。


隼人君が、俺の方を見る。
そして、小走りでこちらに近づいてくる。


「愛の様態が急変した……」


隼人君の目は今にも泣きそうだった。


「急変って?」

「よくわからないけど、血を吐いて苦しそうに泣いていたらしいんだ……」

「そうか……」


担架に乗せられた愛ちゃんは、苦しそうに息をしていた。


大丈夫だよね?
流星群一緒に見るって約束したよね?
俺は、心の中で、何度も呟く。


「保護者に連絡した方がいいわね」


千代田さんが、千春ちゃんに言う。


「はい」


千春ちゃんが、走る。
一瞬千春ちゃんと目が合った。
千春ちゃんは、涙目で去って行った。


なんだろう。
この胸の騒めきは……


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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月11日


昨日の深夜2時まで、Gジェネをした。
だけど、巡回していた千春ちゃんに見つかり怒られた。

美穂は、それを見てクスクスと笑っていた。


「亜金、子供みたい」

「この新作で遊ぶこのワクワク感……
 女にはわかんないのさー」

「わからなくてもいいもーん」

「そんなこと言うやつは、こうだ!」


俺は、美穂の頬をつつく。

美穂の肌が、柔らかい。


「あー。
 やったなー!」


美穂は、俺のお腹をつまむ。


「あー。
 仕返しするぞー」


俺も美穂のお腹をつまもうとしたが、脂肪がない。


「へへーん。
 私は、運動もしてるから亜金みたいに脂肪はないよーだ」

「あるぞ……
 唯一脂肪があるばしょが……」


俺は、そう言って美穂の胸を見る。


「だーダメだよー。
 エッチー!」

「しょせんおっぱいは、脂肪が9割、乳腺1割。
 つまり、ほぼ脂肪なんだー!」

「その理屈滅茶苦茶だー」

「もーまーせーろー」


俺は、ベッドの中で美穂に迫る。
だけど、美穂は、逃げない。


「今日は、女の子の日だからダメ」

「女の子の日だと胸を触ったらダメなのか……」

「だって、それ以上のことになったら大変でしょ?」

「ならないと思うけど……」

「と言うか!
 女の子の胸は触ってはダメ!」


うん。
普通の反応だ。
俺の知っている前の美穂ならきっとこう答えるだろう。


 「胸か?
  触るなら触ってもいいぞ?
  その代り、1分120円な?
  120円で触り放題揉み放題どうだ?」


と金をとる。
金で触れるのなら触りたかったけど……
結局触らず終いに終わってしまった。
120円、触っていればよかった。

これが、高いのか高くないのかもしれないけど……
少し意地悪をしてやろう……


「120円払っても?」


でも、これで本物の美穂かどうかわかるな……


「へ?」


美穂は、首をかしげる。


「いや、何でもないよ」


やっぱりそうだ。
この子は、美穂じゃない。
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