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小説:余命宣告 [余命宣告]

12月30日


昨日の夜。
愛ちゃんは、息を引き取った。
その死に際に俺達は、なんとか立ち会う事が出来た。

意識不明の人が、死ぬ前に、少しだけ意識を取り戻す事があるそうです。
意識を取り戻した時、俺達も愛ちゃんの家族も、少し安心していました。
だけど、周りの医師や看護師さん達は、違いました。


「愛ちゃんの話を聞いてあげてください」


千春さんが、涙声で言いました。
俺は、頷き愛ちゃんの話を聞きました。


「私ね。
 病気が治ったら、隼人君とデートしたいな。
 お花畑に行って、私が隼人君の為に、お花の冠を作ってあげるの。
 朝も早起きして、お弁当作って……
 私、卵焼きしか作れないから、ママにも少し手伝ってもらうの……
 ねぇ、隼人君、私の作った卵焼き美味しい?」


愛ちゃんは、そう言って隼人君の方を見た。

隼人君は、ニッコリと笑い頷いた。


「美味しいよ」

「ホント?
 よかった……」

「……ねぇ、隼人君」

「うん?」

「大きくなったら、私をお嫁さんに貰ってください」

「バカだな……」

「え?」

「プロポーズは、男の方からするものだろ?」

「あははは……」


愛ちゃんは、切なそうに笑った。


「愛」

「なぁに?
 隼人君」

「僕のお嫁さんになってください」


隼人君は、そう言って愛ちゃんの手を握り締めた。


「はい。
 私をお嫁さんにしてください」


愛ちゃんは、顔を赤くして答えた。


「これ、指輪……
 今は、おもちゃだけど大きくなったら本物を買うから……」


隼人君は、愛ちゃんの指に指輪をはめた。


「えへへ……
 ありがとう」

「うん」

「えへへ……
 隼人君」

「どうした?」

「隼人君。
 大好き……」

「……僕もだよ」

「……」


愛ちゃんは、隼人君の言葉に幸せそうに笑うと、そのまま息を引き取った。
隼人君は、その場で静かに涙を流した。
隼人君だけじゃなく、その場に居る全ての人が涙を流した。



明日へと続く

※この物語は、フィクションです。
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