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亜金友人帳 [亜金友人帳]

5月21日


月曜日。
今日から学校が、再開する。
流石の初日。


テレビ局の人たちが校門に群がっている。
マイクを持ったテレビ局の女性が、俺に近づいてくる。


「一言いただけないでしょうか?」

「え?」

「テロリストと呼ばれる人たちに襲われたんですよね?
 怖くありませんでしたか?」

「怖かったですね」

「犯人に対して何か一言お願いします」

「いや、それはちょっと……」


女のリポーターは、俺の耳元で囁く。


「友人帳を渡しなさい」

「え?」

「でないと、貴方の家を襲うわよ?」

「何を……?」

「今夜、近所の公園で待っているわ。
 来なければどうなるかわかっているわよね?」


俺は、一歩も動けない。
なんなんだ?この感覚……


「ご協力ありがとうございました!」


リポーターは、ニッコリと笑い俺にお辞儀すると他の人の所へと走った。


アイツは、誰だ?


「アイツも妖怪だな」


玉藻が、俺の後ろから声を掛けてきた。
俺は、玉藻の声に驚いてしまった。


「びっくりしたな……」

「友人帳は、絶対に渡すなよ?
 お前のことは私が護る」

「知らない人には、渡さないけど……
 あれってそんなにすごいモノなの?」

「友人帳は、相手を自由に呼び出すことが出来る。
 それだけの能力しかないが、悪用する方法は、幾らでもある」

「そうだね……」

「夜と言っていたな。
 どうするつもりだ」

「とりあえず行く……
 行かなければ、プレさんたちも巻き込むことになる」

「そうだな……
 私も清空さんに迷惑はかけたくない。
 私も一緒に行こう」

「危ないぞ?」

「承知の上だ」


俺は、確かめなくちゃいけない。
アイツらの目的を……


※この物語は、フィクションです。


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亜金友人帳 [亜金友人帳]

5月20日


俺たちは、公園に向かった。

公園に着くと座来栖君と笹鈴さんがそこに居た。
笹鈴さんは、公園のベンチに座り、座来栖君が前に立っている。

俺が、近づこうとすると玉藻が、俺の腕を引っ張る。


「何?」

「今は、2人だけにしてやれ」

「わかったよ」


俺たちは、座来栖君と笹鈴さんの2人の恋の行方を見守ることにした。


「ここに居たのか……」


座来栖君が、そう言って笹鈴さんの隣に座る。


「……うん。
 ここが、私と座来栖君の出会いの場所だから……」

「そうだったか?」

「そうだよ」

「覚えてないのか?」

「え?」

「俺たちもっと前に会っているだろ?」

「え?」

「俺たちが、最初に出会ったのは北海道の札幌スキー場だろ?」

「覚えているの?」

「当たり前だ。
 俺があげた赤いマフラーをつけて現れた時は、驚いたけどな」

「うん……」

「ここは、再会した場所だろ?」

「うん。座来栖君。
 覚えてくれていたんだね」

「お前との思い出は全部覚えている。
 小学生の時、転入してきたときのこと。
 中学のクラブ活動、射撃部のマネージャーになったこと。
 射撃部の遠征の時、自分の切符を無くして泣いたこと……」

「それは、忘れて良いよ」


笹鈴さんは、苦笑いを浮かべた。


「全部全部覚えている」

「私も覚えているよ。
 座来栖君が、ホワイトデーに手作りシューマイを作ってくれたこととか……」

「それは、忘れれてくれ」

「今でもわからないよ。
 なんでシューマイなの?」

「本当は、マシュマロをプレゼントをする予定だったのだが……
 マシュマロでは普通かと思ってな。
 思い出に残るモノを作りたかったのだ」

「バッチシ、記憶に残ってるよ」

「なら、よかった」


座来栖君が笑う。
するとつられて笹鈴さんも笑う。


「大丈夫そうだな」


玉藻が、そう言うと俺の腕を引っ張る。


「うん?」

「帰るぞ」

「そうだね」


抱き合う笹鈴さんと座来栖君を後ろに僕たちはばれないように帰った。


※この物語は、フィクションです。

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亜金友人帳 [亜金友人帳]

5月19日


昨日の夜、座来栖君から携帯に電話があった。


「笹鈴、知らないか?」

「え?」

「昨日から連絡が取れないんだ」

「実は――」


俺は、昨日のあった出来事を座来栖君に話す。


「そうか……」

「俺も探したんだけど見つからなくて、さっき家に戻ったばかりなんだ」

「俺も探す」

「え?ダメだろ?
 座来栖君は、入院しているんだから」

「関係ない。
 今の笹鈴を1人には、させておけないからな……」

「わかった。
 俺も、もう一度、探すよ」

「ああ。
 見つかったら連絡してくれ」


座来栖君は、そう言うと電話を切った。


「六花。
 笹鈴さんを探しに行こう。
 きっとお前の鼻も役に立つ」

「にゃーん」


六花は、そう言って鳴くとゆっくりと立ち上がった。

僕は、玄関を出た。


「亜金。こんな時間に出かけるのか?」


玉藻が、話しかけてきた。


「あ、玉藻……」

「その顔何かあったのか?」

「座来栖君が、笹鈴さんと連絡が取れないらしいんだ」

「そう言えば座来栖は、また入院したんだってな?」

「うん……」


俺は、玉藻に事情を話した。


「そうか、笹鈴を見つけたいのか……
 なら、簡単な方法があるぞ」

「え?」

「友人帳を使えばいい」

「笹鈴さんの名前は、友人帳に書かれてないよ?」

「名前は、わかるだろ?
 友人帳を持って笹鈴をイメージすればいい。
 そうすれば友人帳は、導いてくれるはずだ」

「わかった……」


俺は、友人帳を持って笹鈴さんをイメージした。
すると笹鈴さんが、俺の目に映される。
ここは、近所の公園……?


「見えた!
 笹鈴さんは、近所の公園にいる!」

「そうか……じゃ、行くぞ!」

「え?玉藻も行くの?」

「当たり前だ」


玉藻は、そう言って苦笑いを浮かべた。


※この物語は、フィクションです。

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亜金友人帳 [亜金友人帳]

5月18日


金曜日、今日も学校は休みだ。
今日も座来栖君がいる病室に向かうか……

一昨日、あの後座来栖君は病院に運ばれた。
また、2~3日の入院が必要らしい。


俺は、1人で座来栖君がいる病室に向かった。
すると病室の入り口にたたずむ笹鈴さんを見つけた。


「笹鈴さん、中に入らないの?」

「亜金ちゃ……
 私がいると座来栖君に迷惑がかかるから……」

「そんなことはないと思うけど……」

「前もそう、私を護るために……」

「気にしなくてもいいよ。
 女の子を護るのは男の仕事みたいなものだから」

「でも……
 本当は、私が護らなくちゃいけないのに……」

「どうして笹鈴さんが、座来栖君を護るの?」

「……亜金ちゃ、私の正体知ってるんでしょ?
 亜金ちゃ、その素質あるもん」

「正体?
 笹鈴さんが、妖怪だってこと?」

「うん……」

「それと笹鈴さんが、座来栖君を護ることとどう関係あるの?」

「私ね、小さいころ雪山でライフルで殺されかけたことがあるの」

「え?」

「その時にね、助けてくれたのが座来栖君なんだ」

「そこから一目惚れ……
 私は、力をつけて小学生のころに人間に化けてそっから座来栖君にべったり……
 座来栖君優しいよね、私みたいなのにも優しいんだもん」

「……そっか」


あの夢は、笹鈴さんの記憶だったのかな?


「うん」

「笹鈴さんって、もしかして雪女?」

「あ、うん。バレちゃった?」

「うん、周りを凍らせたから、それでなんとなく……」

「そっか……
 私、座来栖君に嫌われちゃったかな?」

「そんなことないよ」


俺が、そう言うと笹鈴さんが、小さく笑う。
その目には涙が一筋こぼれた。
こぼれた涙は、すぐに凍り地面に落ちるとバラバラに割れた。


「泣くことも満足に出来ない女に座来栖君は、魅力を感じてくれないと思う。
 だから、私はもう座来栖君から離れようかなって思うんだ……」

「え?」

「あのアゲハって人、また私を狙ってくる。
 だから、私が離れることで座来栖君を護るの」


笹鈴さんが、そう言うと周りの空気がヒンヤリと冷たくなる。
そして、その場から姿を消した。

笹鈴さんがいつもつけていた赤いマフラーだけが、床に残されていた。

こんな時、どうすればいいのかわからない。

俺は、座来栖君の病室には入らず外に出た。

外は、曇り。
笹鈴さんを探そうと思ったけれど見当もつかない。
でも、俺は朝の街を徘徊した。

※この物語は、フィクションです。

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亜金友人帳 [亜金友人帳]

5月17日


頭が重い。
体がだるい。


幸い明日まで学校は休みだ。
今日は、外に出ずに家に引きこもろう……


俺は、ゆっくりと目を閉じた。


ひんやりとした空気が、俺の体を包み込む。

これは、なんだろう……?

俺は、そう思い目を開ける。
そこには、白い着物を着た小さな女の子がうずくまっていた。


なんだ?
これは、夢……?
玉藻の時と同じだ。
あの時の感覚に似ている……


「ひっく……ひっく……」


女の子が泣いている。


「お前、妖怪だな?」


ライフルを持った男が、その女の子に銃口を向ける。

女の子の顔は恐怖におののき、ガタガタと震えている。


「妖怪は殺さなくちゃいけない」


男は、そう言ってライフルの引き金に手を当てる。


「何してるの?」


女の子と同じ年くらいの男の子が現れる。
男の子は、赤いマフラーをつけていた。


「坊ちゃま。
 妖怪です。妖怪は悪です。殺さなくちゃいけません」


男が、そう言うと男の子は、すぐに返答する。


「子供でしょ?」

「大人になれば人を殺めます」

「私、誰も殺さないから……
 だから、殺さないで……」


女の子は、涙を流しながら漢に訴える。


「妖怪を見逃したら、私が旦那様に叱られます」

「怒られるんですむのなら、殺さないで上げてよ。
 命だよ?命は大事なんだよ?」


男の子の目はまっすぐとそしてしっかりと男を見ていた。


「坊ちゃま……」


男は、一呼吸入れて言葉を続けた。


「わかりました。
 この件は、私と坊ちゃまの2人だけの秘密ですよ?」

「ああ」


男の子は、そう言って女の子の頭に手を当てた。


「お前の体冷たいな」


男の子は、そう言って自分がつけていた赤いマフラーを女の子の首に巻いた。


「あ……ありがとう」

「さぁ、帰っていいぞ」


男の子は、ニッコリと笑った。


※この物語は、フィクションです。

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