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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年07月23日


昨日の手術。

手術は、成功した。

そう言ってほしかった。
だけど、神様言うヤツはそんなに優しくない。
そんなのわかっていた。
今日の朝、太郎が俺の部屋にやって来た。


「亜金さん、ちょっと2人で話してもいいっすか?」


太郎の表情が、強張っている。
今にも泣きそうだ。


「ああ。
 構わない。
 屋上に行くか……」

「はい」


俺たちは、無言で病院の屋上までやって来た。

蝉が鳴いている。
ただひたすら鳴いている。


「で、話ってなんだ?」


何の話かわかっている。


「萌ちゃんのことです。
 萌ちゃんのガンなんですが、昨日の夜、組織検査の結果が出たんっす……」

「ああ……」

「段階評価が5に達成していたっす」


奇跡と言うヤツを信じたかった。
ガンの段階評価が5……
つまり悪性の癌と言うことなのかな?


太郎は、その場で泣き崩れる。
涙で顔がぐちゃぐちゃになる。


「萌ちゃんは、このことを知っているのか?」


太郎は首を横に振る。


「言えない、言えないっす……」

「そうか……」

「明後日、一時帰宅するんっす。
 それが、最後の帰宅になると思うっす」

「そうか……」

「退院の時、喫茶萌萌で、退院パーティーをやろうと思うっす。
 よかったら亜金さんも……」

「ああ。
 参加するよ。
 小太郎にも声を掛けないとな」

「そうっすね……」

「太郎。
 泣くな」

「え?」

「子供たちの前でも萌ちゃんの前でも絶対泣くな。
 萌ちゃんも子供たちも不安がる」

「そうっすね……」


太郎が、涙を拭う。
そして、笑顔を作る。

太郎、大変だけど頑張れよ。

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